日本統治期台湾における訳者及び「翻訳」活動―植民地統治と言語文化の錯綜関係―

楊承淑 編

譯者是殖民時期介乎統治者與被統治者的見證人。
本書藉由譯者的內在視角與外在活動,剖析臺灣日治時期的殖民統治。


本書以臺灣日治時期的殖民統治為研究範疇,並以探討該時期的譯者與譯事活動為主旨。七位作者對於前述主題的關注,主要在於殖民統治下的譯者角色功能,以及譯者在語言文化上的「翻譯」活動。

殖民統治並非臺灣獨有的歷史記憶。在亞洲,甚至可說是各國共有的歷史軌跡與印記。直到數十年後的今天,殖民的歷史烙印依然在亞洲各國的語言文化與政治經濟中,貫穿於民眾物質與精神生活的脈絡。然而,多數國家對於過往的史料與事蹟往往流於忽視或是視為禁忌,以致環顧同受殖民統治的亞洲鄰國,迄今未見對本國殖民經驗的深刻研究。

而另一方面,亞洲過去殖民統治區域最廣的日本,也同樣未在其歷史研究(無論在日本史或東洋史)中,正視日本在亞洲的殖民歷史。寄望透過譯者的內在視角與外在活動,將殖民時期介乎統治者與被統治者的見證人──譯者的言述,進行深入的探究與剖析。


本書は台湾の植民地統治を研究対象とし、その時期の訳者と翻訳活動の探求を主旨としたものである。7名の執筆者のこの主題に対する関心は、主として植民地統治下における訳者の役割としての機能及び訳者の言語文化における翻訳活動にある。

植民地統治というのは台湾のみの歴史的記憶ではなく、アジアにおいては各国共通の歴史の軌跡と記憶であるとさえ言えるものである。数十年経過した現在でも、依然としてアジア各国の言語文化や政治経済の面において、植民地統治の痕跡は、一貫して民衆の物質的及び精神的生活の脈絡の中に残存している。しかしながら多くの国々は過去の歴史的な資料や事蹟をしばしば軽視したりタブー視したりしがちであり、ともに植民地統治を受けたアジアの隣国を見渡してみても、自らの被植民地経験に対する深い研究は今だに見られない。

一方、アジアにおいて過去に植民地を最も広く有した日本もまた、同様にその歴史研究(日本史学であれ東洋史学であれ)において、アジアでの日本の植民地支配の歴史を正視していない。

本書は以上の視点に基づき、訳者の内在的視点と外在的活動を通して、植民地時期において統治者と被統治者を介在した証人としての訳者の言述に対して、考察と分析を深めようとするものである。

【編者簡介】

楊承淑
日本國立東北大學文學研究科碩士,北京外國語大學語言學(翻譯方向)博士。現任輔仁大學跨文化研究所教授兼所長(2013.08-),曾任輔大翻譯學研究所教授兼所長(1994-2000,2006-2010)。學術專長:口譯研究、譯者研究。

東北大学文学研究科修士、北京外国語大学言語学(翻訳専攻)博士。現輔仁大学異文化研究所(大学院)教授兼所長(2013.08-)、元輔仁大学翻訳学研究所(大学院)教授兼所長(1994-2000、2006-2010)。専門は通訳研究、訳者研究。

序文
 
本書は台湾の植民地統治を研究対象とし、その時期の訳者と翻訳活動の探求を主旨としたものである。7名の執筆者のこの主題に対する関心は、主として植民地統治下における訳者の役割としての機能及び訳者の言語文化における翻訳活動にある。
 
植民地統治というのは台湾のみの歴史的記憶ではなく、アジアにおいては各国共通の歴史の軌跡と記憶であるとさえ言えるものである。数十年経過した現在でも、依然としてアジア各国の言語文化や政治経済の面において、植民地統治の痕跡は、一貫して民衆の物質的及び精神的生活の脈絡の中に残存している。しかしながら多くの国々は過去の歴史的な資料や事蹟をしばしば軽視したりタブー視したりしがちであり、ともに植民地統治を受けたアジアの隣国を見渡してみても、自らの被植民地経験に対する深い研究は今だに見られない。
 
一方、アジアにおいて過去に植民地を最も広く有した日本もまた、同様にその歴史研究(日本史学であれ東洋史学であれ)において、アジアでの日本の植民地支配の歴史を正視していない。とりわけ植民地としての台湾に関する歴史的研究は学界において辺縁的なテーマと見なされ、311大震災以前は、日本の民間の台湾経験もまたその経験者や家族によって黙して語られぬ場合が多かった。
 
しかしながら、過去の史料や事蹟に直面するにせよ、現在の日台異文化交流の問題を探求するにせよ、日本統治時代の歴史的根源に向き合わないわけにはいかない。そこで、2012年から本書の数名の著者が中心となってグループを立ち上げ、毎月一回研究会を開催し、毎年9月に年度の研究テーマを更新するとともに一年間の研究活動計画を作成した。
 
2012年9月27日には、台湾の中央研究院台湾史研究所及び香港の中文大学翻訳研究センターの協賛のもとで、半日の「日治時期的譯者與譯事活動(「日本統治時期における訳者と翻訳活動」)ワークショップを開催し、本書の5名の著者が当日それぞれ1篇の論文を発表した。本書に収録したのは筑波大学伊原大策教授及び靜宜大学黃馨儀教授の論文である。
 
2013年9月7日には、台湾翻訳学学会・台湾大学文学院・輔仁大学跨文化研究所及び国家教育研究院との共同主催により、国家教育研究院にて一日間の「譯史中的譯者」(「翻訳史における訳者」)というテーマで国際シンポジウムを開催し、香港中文大学翻訳学部王宏志教授、日本立教大学異文化コミュニケーション研究科武田珂代子教授、シンガポール南洋大学中文学科関詩珮教授(Uganda Sze-Pui Kwan)、及び台湾師範大学翻訳研究所賴慈芸教授を特別講演者として招いた。本書に収録したのは李尚霖教授及び藍適齊教授の論文である。
 
2014年度の活動は、すなわち本書の編集出版である。本書では特定の訳者を研究対象として、4名が歴史資料や文献及び文体を通して訳者の役割機能について分析を行った(冨田哲,橫路啓子,楊承淑,藍適齊)。またもう一方では、訳者の知識生産活動の軌跡に対して、台湾語教本(伊原大策)や複通訳制の下での台湾官話(李尚霖)及び通訳試験問題の台湾語表記法(黃馨儀)の観点から考察を行った。
 
同時に、2014年8月から我々は再び「台湾日治時期的譯者與譯事活動」(台湾日本統治時期における訳者と翻訳活動)をテーマとして、台湾の科学技術省の資金援助の下でプロジェクトグループを立ち上げ、広く日台の学者を招いて学際的研究を推し進めることとなった。すなわち歴史学研究(陳偉智,藍適齊,八百谷晃義)、社会言語学研究(李尚霖,黃馨儀)、言語史研究(伊原大策)、台湾植民地研究(末光欣也,玉置充子,賴郁君)、翻訳学研究(楊承淑,陳宏淑)、文化研究(冨田哲,朱惠足,汪俊彥)、歴史文献翻訳研究(徐国章,陳文添)等である。学際的研究の相互交流の下における複眼的な観察の視点と論究によって、台湾の日本統治時期に関する異文化研究がより深まることを期待したい。

序文

第一章 日本統治時代初期における台湾語教本の系譜(伊原大策)

第二章 台湾植民地時代初期における日本統治と清代官話―「複通訳制」下の台湾官話使用者を中心に―(李 尚霖)

第三章 ある台湾語通訳者の活動空間と主体性―市成乙重と日本統治初期台湾―(冨田 哲)

第四章 日本統治時代台湾の理蕃政策と通訳者―「生蕃近藤」とその周辺を中心に―(横路啓子)

第五章 日本統治期台湾における通訳兼掌制度―筆記試験の実施とそれが台湾語表記法に与えた影響―(黃 馨儀)

第六章 訳者の役割とその知識生産活動―日本統治期の台湾における法院通訳小野西洲を例として―(楊 承淑)

第七章 言語能力がもたらした「罪名」―第二次世界大戦で戦犯となった台湾人通訳―(藍 適齊)

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