Cheng-Zhu school and East Asia in the Early Modern and the Modern period

Edited by Inoue Katsuhito Huang Chun chien, Tao De-min

  • PublishedMarch, 2012
  • Binding精裝 / 21*15 / 576pages / 單(黑) / 日文
  • Publisher國立臺灣大學出版中心
  • SeriesJapanese Studies Series 9
  • ISBN978-986-03-2257-6
  • GPN1010100686
  • Price NT$1250
  • Paper Books San Min Books / wunan / books.com.tw / National Books / iRead / eslite / TAAZE /

2010年は朱熹生誕880年にあたる。これを機会に関西大学文学部と台湾大学人文社会高等研究院との共同で「朱子学と近世‧近代の東アジア─テキストをふまえたアプローチ─」と題する国際シンポジウムが関西大学百周年記念会館で開催された。本書は、西欧近代化によってもたらされた科学技術文明とそれに伴う危機的状況を踏まえ、朱子学がもつ今日的意義─科学至上主義的な物質文明の克服および「仁」に基づく共生社会の構築と環境倫理の実現に大きな役割が期待できること─を確認すると同時に、近世近代の中国・日本・朝鮮における朱子学・陽明学など諸学派の多様な展開と相克の状況をテキストに対する厳密な吟味によって検討した。

2010年為朱熹誕辰880周年,藉此機會,關西大學文學院與台灣大學人文社會高等研究院以「朱子学と近世‧近代の東アジア─テキストをふまえたアプローチ─」為題,於關西大學百周年紀念會館合辦了一場國際研討會。本書透過西歐近代化所帶來的科學技術文明與社會、生態方面的危機,重新確認朱子學所具有的現代意義,提倡建構以「仁」為核心價值的共生社會與環境倫理。同時透過許多相關文獻,仔細檢討近世、近代中日韓各國朱子學、陽明學等學派的多樣化發展及其對立互動的複雜狀況。

主編----

井上克人
文學博士、關西大學文學部教授。擅長領域為宗教哲學、東西比較思想。著有『露現と覆蔵─現象学から宗教哲学へ』(關西大學文東西學術研究所研究叢刊20、關西大學出版部、2003)、『西田幾多郎と明治の精神』(關西大學文東西學術研究所研究叢刊39、關西大學出版部、2011)、『「大乗起信論」の研究』〔編著〕(關西大學文東西學術研究所研究叢刊15、關西大學出版部、2000)等。

黃俊傑
美國華盛頓大學歷史系博士、臺大人文社會高等研究院院長。擅長領域為東亞儒學、戰後臺灣史、通識教育。著有“Humanism in East Asian Confucian Contexts”, Bielefeld: Transcript Verlag, 2010、<東亞文化交流中的儒家經典與理念:互動、轉化與融合>(國立臺灣大學出版中心、2010)、『東アジアの儒学─経典とその解釈─』〔藤井倫明・譯〕(ぺりかん社、2010)等。

陶德民
文學博士。日本漢學思想史、近代東亞文化交涉史、關西大學文學部教授、日本關西大學文化交涉學教育研究中心主任。著有『懷德堂朱子學研究』(大阪大學出版會、1994)、『明治の漢学者と中国─安繹・天囚・湖南の外交論策』(關西大學出版部、2007)、『東アジアの過去、現在と未来』〔合編著〕(關西大學文學研究科、2009)等。

作者------

朱茂男、陳來、柴田篤、吾妻重二、緒方賢一、徐興慶、楊儒賓、田尻祐一郎、崔在穆、蔡振豊、張崑將、宮嶋博史、恩田裕正、張品端

【目次】

序一 ........................................... 陶徳民
序二 ........................................... 黄俊傑
序三 ......................................... 井上克人
序四 .............................. 朱茂男(山田明広訳)

朱子学と哲学・倫理
第一章 経典解釈と哲学構築の関係 ─朱子の『四書』解釈を中心に .......黄俊傑(吾妻重二訳)
第二章 科学技術時代における朱子学の倫理的課題 ─〈西欧的知性〉と〈東洋の叡智〉─ .......井上克人

朱子学およびその近世日本における展開
第三章 朱子思想における四徳論 ....... 陳来(陳贇訳)
第四章 朱子学における仁の思想 .......柴田篤
第五章 朱熹と釈奠儀礼改革 .......吾妻重二
第六章 礼が形作る身体 .......緒方賢一
第七章 朱舜水の思想と徳川儒教の発展 .......徐興慶(井上充幸訳)
第八章 懐徳堂朱子学派の徂徠学批判─聖人観と窮理説をめぐって─ .......陶徳民

東アジアにおける儒教と反儒教の諸相
第九章 異議の意義 ─東アジアの反理学思潮を論ず─ .......楊儒賓(山田明広訳)
第十章 江戸の国学と『論語』 .......田尻祐一郎
第十一章 朝鮮における朱子『大学章句』に対する一挑戦─盧守慎の「大学集録」を中心として─ .......崔在穆
第十二章 朝鮮・丁若鏞と日本古学派 .......蔡振豊(山田明広訳)
第十三章 佐久間象山と張之洞 ....... 張崑將(山田明広訳)
第十四章 日本における福沢諭吉研究批判─儒教観を中心に─ .......宮嶋博史

附録(一) 『朱子語類』訳注刊行会の活動について .......恩田裕正
附録(二) 朱熹『白鹿洞書院掲示』の日本における流伝およびその影響 て .......張品端

人名索引
事項索引

序一 ( 井上克人)

2010年は朱熹生誕880年にあたる年であった。21世紀、東アジア圏にともに生きている私たちにとって、朱子学がどのような意義をもち、現代社会においてそれをどのように生かし、また将来の世代の人たちにそれをどのようなかたちで譲渡してゆくべきなのか、そうした様々な問題を改めて考える機会をもつべく、この記念すべき年にあたり、関西大学において、国際シンポジウムを開催した。

現代社会を振り返ってみると、18世紀から19世紀以降、西欧近代化によってもたらされた科学技術文明は現代の私たちに様々な利便をもたらしたことは言うまでもないが、それと同時に、公害や地球環境破壊という深刻な事態をも与えてきた。そして2011年3月11日に起こった東日本大震災と大津波によって、あの世界を震撼させたチェルノブイリ原発事故と同レベルの福島原発事故が勃発した。こうした危機的状況に陥った私たちは、現代の私たちの生活基盤の建て直しと未来の次世代へ向けて担うべき大きな課題を担うこととなった。この大惨事が与えた大きな試練のなかで私たちが気づいたことは、共同社会に生きる私たちの「絆」の強さであった。それを思うにつけ、新たな復興を模索するなかで、朱子学がもつ今日的意義をテキストの厳密な吟味に基づきながら再確認し、同時に、朱子学が決して前近代的・封建的な世界観にとどまるものではなく、現代における科学至上主義的な物質文明を克服し、「仁」に基づく共生社会の構築と深い精神性に根差す環境倫理の実現に大きな布石となるものであることを、本書を通じて広く社会に提唱したいと思う。

最後に、本書の上梓にあたって、翻訳の労を取ってくださった若い研究者の皆さんに、改めて感謝の意を表したい。

序二(黄俊傑)

台湾大学人文社会高等研究院は2006年10月に創立して以来、東アジアの文化や思想などの領域の研究に取り組んできた。「東アジア儒学」の研究を一層進めるために、2010年9月10日、当研究院が関西大学文学部と共同で「朱子学と近世‧近代の東アジア─テキストをふまえたアプローチ─」と題する「朱子生誕880年記念国際シンポジウム」を開催し、幸いにも関西大学文化交渉学教育センター(ICIS)、台湾朱子学研究学会、世界朱氏聯合会などの団体の協賛を得ることもできた。

東アジア儒学の形成と発展の過程において、朱子学は分水嶺のような地位を占めており、そのスケールはきわめて大きいものである。朱子は漢・唐時代の旧学と北宋諸子の学問を融合させた上で新しい学問体系を築き上げてきた。その一方で、朱子以降の東アジア各国の儒者にとっては、朱子学は正に新たな手本を示し、新しい哲学議題を提案し、画期的パラダイムを打ち出すに至ったのである。13世紀以降の東アジアの儒学者たちが、朱子学を質したり、排斥したり、反対したりしたこともあったが、結局は、朱子学を避けて通るようなことはなかった。

朱子学の研究進展をなお一層図るために、2005年、台湾の朱子学研究者たちにより「台湾朱子学研究協会」が創立された。協会は当研究院と何度も朱子学国際シンポジウムを共催してきた。今回開催された国際シンポジウムは関西大学の協力関係によって「朱子学の宗教性と近世東アジア」および「近世東アジア思想交渉の諸相」などを主な課題として行われた。本論文集の出版は台湾大学と日本の関西大学との長期にわたる友好協力の証しを示すだけではなく、東アジアの朱子学研究の新たなマイルストーンでもあると確信している。

序三(陶徳民)

関西大学と台湾大学とは姉妹校であり、関西大学文化交渉学教育研究拠点と台湾大学人文社会高等研究院とは姉妹機関でもある。これまで互いに幾度も実り多き協力を重ねてきたが、2009年の夏、同高等研究院を訪問した際に、黄俊傑院長と朱茂男会長より今回のシンポジウムを共同開催するというご提案をいただいた。

関西大学は日本における朱子学研究の重鎮の一つである。吾妻重二教授は、中国の朱子学を研究する分野で重要な業績を挙げられただけでなく、近年、韓国の朱子学についても研鑽を積んでおられる。また東海大学の恩田裕正教授および広島大学の市来津由彦教授をはじめとする研究者チームは、『朱子語類』の日本語による訳注本の出版という不朽のプロジェクトを推進してこられた。周知のように、このプロジェクトは、先般ご逝去された溝口雄三先生が1980年代中頃に始められたものである。

井上教授は明治哲学における宋学の影響についての研究で独自の境地を切り開かれ、私自身は、大阪の朱子学の書院である懐徳堂(1724-1869)に関する博士論文を執筆したが、この論文は幸いにも1994年の春に創設された大阪大学出版会から、最初の文系専門書四種のうちの一つとして出版された。同時に、私たちは国内外の宋明理学および東アジア近世思想史の研究者の皆さんと広範に連携し、そのうち、余英時、黄俊傑、徐興慶、陳来、郭斉勇、呉震の各先生方に本学の客員教授や訪問研究員をお引き受けいただいた。私自身も、日本の近世思想史を研究して、田尻祐一郎、高橋文博、印藤和寛の各先生方を含む、数多くの日本の学者からの助力を受けてきたことに、改めて感謝の意を表明したいと思う。

2010年、私たちは関西大学百周年記念会館において、「朱子生誕880年記念国際シンポジウム」を開催したが、当然ながら、それはただ単に朱子学の源を探り、「本家探し」や「族譜の増補」をするためではなく、800年以上にわたる朱子の思想の東アジア各国における多様な発展、およびその普遍的な意義について探求するためであった。これを言い換えれば、朱子の思想およびその後人、とりわけ近世・近代の日本人と朝鮮・韓国人による実践(そこには継承と発揮、反論と批判の両面が含まれる)の中から知恵や養分を汲み取り、それによって手がかりや手本を探り出し、今日の世界において、人文と環境の分野が直面している重要な問題を、よりよく解決していくことなのである。本書に寄稿された諸論稿を拝見すると、いずれも信頼に足る歴史文献に基づき深く探求されていることがわかる。本書が広く江湖に迎えられることを切に希望してやまない。